48歳、新たな挑戦。家族への想いから始まった行政書士・水野秀郎の歩み

interview

48歳で、新たな挑戦を始める。

言葉にするのは簡単だが、実際に行動へ移すのは決して容易なことではない。

20年以上にわたりIT業界でキャリアを積み重ねる一方、2025年に行政書士として開業した水野 秀郎(みずの ひでお)さん。その挑戦の背景には、家族への想いと、「人の役に立つ仕事がしたい」という変わらない価値観があった。

現在は外国人の在留資格申請を中心とした国際業務やクリエイター支援に取り組みながら、一人ひとりの相談者と真摯に向き合い続けている。

今回は、水野さんが行政書士を志した理由と、その先に描く未来について話を伺った。

「公務員になるものだと思っていた」学生時代

千葉県四街道市で生まれ、市原市で育った水野さん。

両親はともに県職員として働いており、幼い頃から身近にいた大人たちは公務員ばかりだったという。そのため、将来について深く考える前から、「自分もいずれ公務員になるのだろう」と自然に考えていた。

「子どもの頃は、特にやりたい仕事があったわけではありませんでした。親が公務員だったので、自分も公務員になるんだろうな、くらいの感覚でしたね。」

公務員になるためには法律の知識が必要だと考え、進学先は法学部がある大学を選択。
夢や憧れからではなく、「将来のために必要だから」という現実的な理由だった。

そんな水野さんは、自身を「勉強は好きではなかったけれど、できるタイプだった」と振り返る。

中学生までは、特別に勉強をしなくても一定の成績を取ることができた。
しかし、高校へ進学すると状況が変わる。
進学したのは、地域でも学力の高い生徒たちが集まる高校だった。

当然のように選抜クラスへ入れると思っていたものの、その期待は外れた。

「初めて、自分より勉強ができる人がたくさんいる環境に入りました。そこで、『このままじゃまずいな』と思ったんです。」

それまでのように、なんとなく授業を受けているだけでは通用しない。
そう気づいてからは、自宅でも机に向かう時間が増えていった。

大学受験を意識し始めた頃、最初に受けた模試の判定はE判定。
決して楽観視できる状況ではなかった。
それでも、水野さんは諦めなかった。

「家から一番近い国立大学に行こうと思っていました。法学部もありましたし、私立より学費も抑えられますから。」

勉強が好きだったわけではない。
しかし、目標を達成するために必要だと思えばやる。

受験期には、一日10時間以上机に向かう日も珍しくなかったという。
地道な努力を積み重ねた結果、見事に志望していた国立大学への進学を果たした。

振り返れば、この頃から水野さんの根底には、現在にも通じる一つの強みがあったのかもしれない。
派手な才能や特別な成功体験ではなく、目の前の課題に対して真摯に向き合い、必要だと思ったことを粘り強く積み重ねること。

その姿勢は、後に行政書士として複雑な制度や申請と向き合う現在の仕事にも繋がることになる。

氷河期世代が掴んだ、20年のキャリア

大学では法学を学びながらも、水野さんの中に明確な将来像があったわけではなかった。

幼い頃から公務員を目指していたこともあり、公務員試験の勉強も始めていた。
だが、本格的に取り組み始めた時期が遅く、次第に就職活動へと軸足を移していくことになる。

当時は2000年前後。
いわゆる就職氷河期と呼ばれる時代だった。

「やりたいことは特にありませんでしたが、エンタメ関係には興味がありました。漫画や音楽が好きだったので、マスコミやエンタメ業界には憧れがありましたね。」

しかし、人気業界の倍率は高く、簡単に門戸が開かれる時代ではなかった。
エントリーした企業は約40社。

結果は、ほとんどが不採用だった。

「本当に落ち続けました。今振り返っても、よくあれだけ落ちたなと思います(笑)」

そんな中、現在も勤務しているコンピューター関連企業から内定を獲得。当時は2000年初頭で、IT産業が大きく発展していく時代でもあった。将来性を感じる分野で新たなキャリアを築こうと考え、入社を決意した。

まさに縁に導かれるような就職だった。
入社後は決して楽な道のりではなかった。

業務に必要な資格取得や知識習得が求められ、必死に勉強を重ねた。
学生時代と同じように、「必要だからやる」という姿勢で、一つひとつ乗り越えていったという。

やがて経験を積み、現在では管理職としてプロジェクトを任される立場へ。

若い頃のようにプログラミングを担当することは少なくなり、計画立案や進捗管理、顧客向け資料の作成など、組織を動かす役割が中心となっていった。
その中で自然と磨かれていったのが、物事を論理的に整理し、相手に分かりやすく伝える力だった。

「今の仕事では、『なぜその品質が担保されているのか』『なぜその計画で問題ないのか』を説明する機会がたくさんあります。行政書士の仕事も同じで、申請内容を論理的に組み立てて説明しなければなりません。」

複雑な情報を整理し、相手が納得できる形で伝える。
長年の会社員生活で培ったその経験は、後に行政書士として活動する上で大きな武器となっていく。

ただ、この頃の水野さんはまだ知らなかった。
20年以上続けてきた会社員人生の先に、もう一つのキャリアが待っていることを。

その転機は、ある家族の出来事によって突然訪れることになる。

行政書士への挑戦を決意した理由

20年以上にわたりIT業界でキャリアを積み重ねてきた水野さん。

管理職としてプロジェクトを任され、安定した会社員生活を送る一方で、自ら事業を立ち上げることなど、この頃はまだ現実的には考えていなかったという。

そんな水野さんの人生に大きな転機が訪れたのは、2023年頃のことだった。

きっかけは、奥様の入院だった。

幸いにも現在は回復し、新たな仕事にも就いているが、当時は今後の働き方や生活について改めて考える出来事になったという。

「妻が体調を崩して入院したことがきっかけでした。将来的なことを考えた時に、自分で事業を立ち上げて、家族と一緒に働ける環境を作れたらいいのではないかと思ったんです。」

もちろん、起業すること自体が目的だったわけではない。
どんな仕事であれば、自分の経験や知識を活かせるのか。そして、人の役に立つ仕事として続けていけるのか。

そんなことを考える中で思い出したのが、学生時代から学んできた法律の知識だった。
法律に対する苦手意識はなく、自分にとって最も現実的に目指せる資格でもあった。

「数ある士業の中でも、行政書士が一番可能性があると思いました。法律の勉強をしてきた経験もありましたし、自分にとって挑戦しやすい資格だったんです。」

さらに、水野さんの中にはもう一つの想いがあった。
それは、企業ではなく“個人”の役に立つ仕事がしたいということだった。

これまで長く携わってきたIT業界では、主に企業を相手に仕事をしてきた。もちろんやりがいはあったが、一人ひとりの人生に直接関わり、感謝される仕事にも魅力を感じていたという。

「ビザの取得や各種申請などを通じて、誰かの役に立てたら嬉しいですし、直接感謝してもらえる仕事がしたいと思いました。」

そうして行政書士試験への挑戦を決意。

働きながら勉強時間を確保することは簡単ではなかったが、学生時代から変わらない粘り強さで学習を続け、見事合格を果たした。
しかし、合格したからといって、すぐに開業するつもりだったわけではない。

会社員として働き続ける中で、資格をどう活かしていくべきか迷いもあった。
そんな中、人事部へ副業について相談したところ、労働時間などの条件を満たせば問題ないとの回答を得る。

そして2025年7月、本格的に行政書士として活動を始める決意を固めた。

「会社の仕事と行政書士の仕事を両立させることは非常に大変ですが、自分自身の目標達成のため、苦難を乗り越えていく覚悟を決めました」

資格を取得しただけで仕事が増えるわけではない。
営業も、集客も、自ら行わなければならない。

それでも水野さんは、新たな世界へ踏み出した。

48歳での挑戦。
その原動力となったのは、家族への想いと、自分自身の可能性を広げたいという気持ちだった。

外国人と企業をつなぐ、国際業務という仕事

行政書士として活動を始めた水野さんが、専門分野として選んだのは「国際業務」だった。

現在は、外国人の在留資格申請を中心に、日本で働きたい外国人や、外国人を雇用する企業の支援に力を入れている。
実は最初から国際業務を目指していたわけではなかったという。

「もともとはクリエイター支援の仕事をやろうと思っていました。国際業務は全く考えていなかったんです。」

行政書士の業務は幅広く、取り扱う分野によって必要な知識も大きく異なる。

開業後、どの分野を専門にしていくべきか模索する中で、クリエイター向けの法務支援や著作権関連の業務について学び始めた。実際にその分野で活動している人たちから話を聞く中で、人脈や業界とのつながりが非常に重要であることを知る。

そんな時に改めて目を向けたのが、これまでの仕事で関わってきた外国人たちの存在だった。

「振り返ると、仕事を通じて外国人の方と接する機会が多かったんです。資格を取得した今、自分の知識を活かして力になれるのではないかと思いました。」

在留資格の申請は、一般的には「ビザ申請」と呼ばれることが多い。
その手続きは決して簡単なものではない。

外国人が日本で働くためには、仕事内容や学歴、職歴、雇用先の状況など、さまざまな条件を満たしていることを証明しなければならない。申請書類を提出すれば必ず許可されるわけではなく、その内容をどれだけ分かりやすく、論理的に説明できるかが重要になる。

「例えば、『日本で働きます』というだけでは許可は出ません。その人がどんな仕事をするのか、その仕事を行うだけの知識や経験があるのか、会社側は適切な雇用環境を整えているのか。そういったことを一つひとつ証明していく必要があります。」

その話を聞いていると、どこか水野さんが20年以上携わってきたIT業界での仕事とも重なって見える。

品質や計画の妥当性を説明し、相手に理解してもらう。
そのために情報を整理し、根拠を示しながら論理的に組み立てていく。

行政書士として求められる力と、会社員として培ってきた経験には共通点が多い。

「申請書を作ること自体が仕事ではないと思っています。本当に大切なのは、その方が何に困っていて、何を実現したいのかを理解することです。」

だからこそ、水野さんは依頼者との対話を大切にしている。

外国人本人が日本で働きたいのか。家族と一緒に暮らしたいのか。企業はどんな人材を採用したいのか。
表面的な相談内容だけでなく、その背景まで丁寧にヒアリングしながら、最適な方法を一緒に考えていく。

また、企業に対しても伝えたいことがあるという。

近年は外国人雇用が当たり前になりつつある一方で、制度を十分理解しないまま雇用してしまい、知らず知らずのうちに法律違反となっているケースも少なくない。

「特に初めて外国人を雇用する企業様には、一度専門家へ相談してほしいですね。悪意がなくても違法な状態になってしまうことがありますし、知らなかったでは済まされないこともあります。」

外国人が安心して日本で働けること。
そして企業側も安心して外国人を受け入れられること。

その両方を支える存在として、水野さんは少しずつ経験を積み重ねながら歩みを進めている。

創る人を守るために

現在、水野さんは国際業務を中心に活動しているが、もう一つ力を入れている分野がある。
それが、クリエイター向けの法務支援だ。

実は、この分野には水野さん自身の学生時代からの想いが関係している。
大学卒業を控えた頃、本当に進みたかったのはIT業界ではなかった。

「就職活動をしていた頃は、マスコミやエンタメ関係の仕事に興味がありました。漫画や音楽が好きだったので、そういった業界で働けたらと思っていたんです。」

しかし、当時は就職氷河期の真っただ中。
希望していた業界への道は険しく、結果としてIT企業への就職を選択した。

その後20年以上にわたり会社員として経験を積み重ねてきたが、行政書士として新たなキャリアを考え始めた時、かつて憧れていたエンタメ業界との接点を見つけることになる。

それが、著作権や契約書作成などを中心としたクリエイター支援だった。

「行政書士の仕事を調べている中で、クリエイターをサポートできる分野があることを知りました。昔から興味のあった世界ですし、何か力になれることがあるのではないかと思ったんです。」

開業当初は、この分野を専門にしていこうと考え、書籍を読んだり、実際にクリエイター支援を行っている専門家から話を聞いたりしながら知識を深めていった。

現在は国際業務を主軸としているものの、クリエイター支援への想いは変わっていない。
特に関心を寄せているのが、漫画家やイラストレーターなど、自ら作品を生み出す人たちだ。

「以前、漫画家を目指して頑張っている方たちと関わる機会がありました。好きなことを追いかけながら努力を続けている姿を見て、応援したいという気持ちが強くなりましたね。」

一方で、創作活動に集中するあまり、法律や契約に関する知識が不足しているケースも少なくないという。
その中でも特に気をつけてほしいと話すのが、著作権に関する問題だ。

「例えば、自分が描いた作品でも、契約内容によっては著作権そのものを譲渡してしまうケースがあります。そうすると、自分の作品なのに自由に発信できなくなったり、後々困ることもあるんです。」

クリエイターにとって作品は単なる成果物ではない。
時間をかけて生み出した努力の結晶であり、自分自身の表現そのものでもある。

だからこそ、水野さんは契約書をしっかり確認し、自分の権利を理解することの大切さを伝えたいと考えている。

「知識があるだけで防げるトラブルはたくさんあります。知らなかったことで後悔してほしくないんです。」

表舞台に立つクリエイターではなく、その活動を支える存在として。
外国人支援と同じように、困っている人の力になりたいという想いが、水野さんをこの分野へと向かわせている。

お客様と向き合い続ける理由

行政書士として開業し、改めて感じたことがある。
それは、「資格を取ること」と「仕事を作ること」は全く別だということだ。

「試験を受けていた時は、正直そこまで考えていませんでした。でも、実際に始めてみると、仕事は待っていても来ないんですよね。」

特に苦労しているのは集客だという。

行政書士の仕事は、資格を持っているだけで依頼が来る世界ではない。自ら人と出会い、自分を知ってもらい、信頼を積み重ねていく必要がある。
そのため現在は、交流会への参加や人とのつながりづくりにも積極的に取り組んでいる。

「いろいろな方とお話しするのは楽しいですね。行政書士の仲間だけでなく、さまざまな業種の方と出会うことで、自分自身も刺激を受けています。」

会社員として働きながら行政書士を続ける日々は決して楽ではない。
それでも、水野さんはこの挑戦を前向きに捉えている。

なぜなら、行政書士としての活動そのものが、自分自身の成長につながっていると感じているからだ。新しい案件に出会えば、その都度勉強する。

制度を学ぶだけではなく、その業界や仕事についても深く理解する。

例えば、外国人の在留資格を扱うのであれば、その人がどのような仕事に従事するのかを知らなければならない。知識だけではなく、業界理解も必要になる。

「依頼を受けてから勉強することも多いですね。もちろん基礎知識はありますが、案件ごとにしっかり調べて、自分なりに整理するようにしています。」

そんな水野さんには、一つのこだわりがある。

それは、依頼者一人ひとりと丁寧に向き合うことだ。
効率や件数だけを追い求めるのではなく、その人が本当に困っていることは何なのかを理解し、最適な方法を一緒に考える。

それが水野さんの理想とする行政書士の姿である。

「名刺の裏にも書いているのですが、『お客様一人ひとりにじっくり向き合います』というのが私の想いです。」

だからこそ、虚偽の申請や強引な手法で依頼を通そうとは考えない。

正しい事実を積み重ねながら、依頼者にとって最善の結果を目指す。
その姿勢は、長年会社員として培ってきた誠実さそのものだ。

将来的には、外国人雇用を支援する企業や、日本で働きたい外国人を幅広くサポートできる体制づくりにも挑戦していきたいと考えている。

しかし、組織を大きくすることが目標ではない。

「人を増やして仕事を回すというよりは、同じ価値観を持ったプロフェッショナルと一緒に、お客様に向き合える組織を作れたら理想ですね。」

48歳から始まった新たな挑戦。
その歩みはまだ始まったばかりだ。

それでも、一人ひとりの相談者と真摯に向き合いながら積み重ねる日々は、きっと誰かの人生を支える力になっていくのだろう。

活動情報
▼行政書士水野秀郎事務所

公式ホームページhttps://office-mizunoh.com/

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まずはお気軽にご相談ください。
水野さんが大切にしているのは、目の前のお客様一人ひとりと、じっくり向き合うことです。

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