直感を信じて、心のままに。──細江 太平が仕立てる“人生を装うスーツ”

interview

「何もないところからでも、直感を信じて動けば道は拓ける。」

山と川に囲まれた岐阜・郡上で育ち、花に触れ、服を仕立てる。

柔道整復師、自動販売機の補充員、花屋、そしてテーラー。
その時々で惹かれた場所を選びながら、歩んできた。

一見つながりのない道のりの中で、細江太平(ほそえ たいへい)さんは悟った。
“装い”とは、自分を語る言葉であり、生き方を映す鏡だということに。

「Atelier EARTH」という名のもとに、
今日も彼は“自分を纏う”という新しいスタイルを届けている。

岐阜・郡上で育った、自由な少年時代

「郡上って、本当にいいところなんですよ。
山も川も近くて、鮎も有名で。川遊びが当たり前の環境でした」

岐阜県郡上市。
自然が生活の一部として存在するこの町で、細江さんは育った。
遊び場はいつも外にあり、何をするにも「好奇心の赴くままに動く」のが当たり前だった。

男三兄弟の真ん中。
幼少期はとにかく自由で、じっとしているより、気になったらまず行動。
そんな衝動が、いつも先に立っていた。

「欲しいと思ったら兄弟から強奪してましたし、
門限も守らないし、学校の窓ガラスも2回くらい割ってます(笑)」

今振り返れば、かなり手のかかる子どもだったと思う。
それでも、誰かに言われて動くより、「自分で決めて動く」感覚の方が、ずっと強かった。

一方で、保育園では先生にべったり。
家ではおばあちゃんに甘える“おばあちゃんっ子”でもあった。

小学5年生のとき、友人に誘われて始めたバスケットボール。
そこから高校まで、彼の生活の中心は常にバスケだった。

「1個ハマると、そればっかりになるタイプなんです。
ゲームもそうで、ポケモンとかマリカー、モンハンもずっとやってました」

勉強は苦手で、赤点も多かった。
だが、“夢中になれる力”だけは、誰にも負けなかった。

柔道整復師として働き、突き当たった「違和感」

進学先に選んだのは、愛知県の専門学校。
柔道整復師を目指した理由は、バスケ時代にお世話になった接骨院の先生への憧れだった。

「その先生みたいになりたい、というのが一番でした。
それと、正直に言うと、地元を離れたかったのもあります」

在学中は、これまでとは違い勉強が楽しかった。
体の構造を知り、理論が結果につながる感覚があった。

卒業後は、三重県の整形外科クリニックへ。
医師と直接関われる環境で、レントゲンやMRIを見ながら治療の過程を学んだ。

だが、現場に立つ中で、次第にある違和感を抱くようになる。

「レントゲン上は“治っている”のに、
患者さんは“まだ痛い”って言うんですよ」

数値や見た目では判断できない、人の感覚。
そのズレに直面し、「治るとは何か」を深く考えるようになった。

「この仕事が嫌になったわけじゃないんです。
ただ、医療だけじゃなく、もっと広い視点や経験が必要なんじゃないかって」

専門学生時代から学んでいた“お金”の知識も後押しとなり、
「稼ぎ方を知れば、他の挑戦もできる」と考え、1年で退職を決めた。

好奇心のままに選んだ仕事たち

次に選んだのは、パチンコ店の仕事。
理由はシンプルだった。

「普段やらない世界だからこそ、気になったんです」

その後、自動販売機の補充員として正社員に。
地元の広報誌で見つけた求人に、「中ってどうなってるんだろう」という好奇心から応募した。

2年弱働く中で、社会の仕組みや流通のリアルを体感した。

同時期、月に1度のペースで東京へ。
セミナーに参加し、地元では味わうことのない外の世界に触れ続けていた。

「地元は楽しい。でも、このまま一生終わるのかな?ってふと思ったんです」

24歳。
周囲の大人からの「若いうちに経験した方がいい」という言葉が、最後の一押しとなる。

何も決めずに上京し、花と服に出会う

2024年11月。
家賃分の現金だけを持ち、住む場所も仕事も決めずに上京。

最初に選んだ仕事は、花屋だった。

「実家にも植物が多かったし、自然に触れる仕事がしたかったんです」

代々木上原近くの花屋で約8ヶ月勤務。
花を通して、色彩や余白、空間の美しさを学んだ。

「花って、人の気持ちを整える力があるんですよね。
それって、後に服にも通じるなって思いました」

その頃、オーダースーツの師匠である竹内 大途たけうち はるとさんと出会う。
きっかけは、2024年2月に自身がスーツをオーダーした経験だった。
*店名:Atelier BERUN

「今まで他の方にオーダーしても、正直、何も感じなかった。
でも師匠のスーツは違った。
歴史から、着こなしまで、全部説明してくれて」

完成したスーツを着た瞬間、衝撃を受けた。

「姿勢も、気持ちも、全然違ったんです」

彼の服に対する認識が、完全に変わった瞬間はここだったという。

それは、ただ“体に合っている”という感覚ではなかった。
自分の内側まで、すっと整えられるような、不思議な感覚。

「服って、こんなに人を変えるんだ」

そう思えたのは、一着のスーツだけでなく、服に向き合う姿勢そのものに触れたからだった。

この出会いをきっかけに、細江さんは竹内さんのもとで、装いの歴史や思想、そして“人に寄り添う仕立て”を学び始める。

10年間続けた、鮎友釣り選手権という原体験

細江さんの“人を巻き込む力”の原点は、中学3年生にある。

自宅の裏を流れる川。
解禁日になると盛り上がるが、釣り人は高齢者ばかり。

「同世代にも、この楽しさを知ってほしかった」

そうして始めた、中高生鮎友釣り選手権。
最初は懐疑的な目も多かった。

だが、毎年続ける中で、釣り経験者よりも初心者が優勝する“ビギナーズラック”が生まれることもあった。そこから、毎年この選手権に出場する選手たちの姿も増え、それぞれが会えることを待ち遠しく思えるような場になっていった。

「変化を目の前で見られたのが、大きかったですね」

事務局の清水さん、郡上鮎の会代表の桒原さん。
2人の大人の存在と、学生メンバー達が彼を支え続けてくれた。

2025年8月3日。
10年間続けた大会は、無事に幕を閉じた。

「寂しさと達成感、両方ありました。
事故なく終えられたことが、何よりでした」

Atelier EARTHが届けたいもの

現在は、出張型のビスポークテーラー「Atelier EARTH」の代表として活動している。

そこには、
“自分のスタイルを見つけて自分の人生を生きてほしい”
という想いが込められている。

「服は、流行を追うものじゃなくて、
その人の生き方に寄り添うものだと思ってます」

細江さんにとって、スーツは“仕事着”でも“勝負服”でもない。
その人がどう在りたいかを、身に纏うことで自身に影響を与えてくれる存在だという。

だからこそ、仕立ての最初に行うのは、採寸ではない。
まず時間をかけて話を聞く。

「どんな場面で着たいのか」
「着たとき、どんな自分でいたいのか」

仕事の内容や立場だけでなく、その人がどんな人生を歩んできて、これからどこへ向かおうとしているのか。

そこまでを共有して、初めて“一着”の輪郭が見えてくるという。

採寸は、一般的なオーダーよりも細かく行う。
仮縫いと最終フィッティングは必ず実施し、完成するまで、何度でも確認を重ねる。

素材は、基本的にウール100%。
扱いやすさや耐久性だけでなく、その1着と長く付き合えることを何より大切にしている。

「無理に提案を押し付けることはしません。
その人が納得して、自然に着たいと思える形が一番なので」

Atelier EARTHが目指しているのは、“今すぐ似合う一着”ではない。

数年後、
「この服を選んでよかった」
と思い返せるような、人生の節目にそっと寄り添う一着だ。

「人生においての“一着”を、一緒に作れたら嬉しいですね」

その言葉には、テーラーとしての技術以上に、人と向き合ってきた時間の重みが滲んでいる。

直感で生きるという選択

「会社員より、独立してからの方が楽しいですね」

そう言い切れるのは、ここまでの道のりで、一人では進めなかったことを何度も実感してきたからだ。

計画通りにいかなくても、
立ち止まりそうになっても、
そのたびに手を差し伸べてくれる人がいた。

背中を押してくれる言動や存在が、次の一歩の“きっかけ”になってきた。

「計画通りじゃなくてもいい。動けば、必ず何かが変わる」

そう思えるようになったのも、自分が多くの人に支えられてきたからだ。
だから今度は、自分が誰かの“きっかけ”になりたいと思っている。

若い世代が、「やってみよう」と思える場所をつくること。

いずれは店舗を持ち、
ただ服を仕立てるだけでなく、
人がふっと力を抜けるような、
くつろげる場を提供したい。

「自分がしてもらったことを、次は、自分が返していく番だと思ってます」

細江 太平は日々、
誰かの人生にそっと寄り添う“きっかけ”を仕立て続けている。

▼SNSリンク・活動情報

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※スーツの相談・質問・ご依頼は、公式LINEにてお気軽にご相談くださいませ。
https://lin.ee/9BdlySb

Instagram(細江太平/個人アカウント)
※日々の活動・素材・仕立ての様子などを更新しています。
https://www.instagram.com/taihei_hosoe?igsh=NzhmOHVheXlva3Zu

note
※服や装いについての想いを、文章で綴っています。
https://note.com/tom_0001

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