人は、香りで記憶される──三村 迅雅が“香りをアートにする”理由

interview

「私が死んでも残る香りですね」

香水を納品したその場で、そう言って涙を流した人がいた。

形に残らないはずの香りが、
その人の人生の一部として、
これからも誰かの記憶の中で生き続ける。

三村 迅雅(みむら じんが)は、その瞬間を忘れられないという。

香りは、目に見えない。
手で掴むこともできない。
けれど、人の感情や当時の記憶を、
一瞬で現在に蘇らせる力を持っている。

彼が香りをつくる理由は、
ただ「いい香り」を届けるためではない。

人が、人を思い出すためのきっかけを残すこと

それが、三村 迅雅というアーティストの仕事だ。

「正直に生きていた」少年時代

兵庫県出身。
小学生の頃の三村さんは、人見知りで泣き虫だった。

初対面の人とはあまり話せない。
けれど、一度心を許すと、よく話す。
誰か一人と深くつながるというより、その時々の出会う人々と、平等に関わってきた。

「今振り返ると、あの頃の自分は正直に生きてたな、って思います」

当時の自分を、かっこいいとは思わない。
けれど、嘘はなかった。

今、彼が考える「かっこよさ」は、強さや派手さではない。

器の広さ。
ただ優しいだけじゃなく、何者でもない目の前の人のすべてを受け入れられる強さ。

「芯が強い人が、かっこいいと思います」

“クールな自分”という仮面

中学生になると、三村さんは「周りからどう見られているか」を強く意識するようになった。
当時のかっこいいの定義は、喧嘩が強くて、怖い、クールなやつ。

本当は人見知りなのに、それを隠すように感情を表に出さず、強い自分を作りあげて振る舞うようになった。

すると、不思議なことが起きる。
クールに振る舞うほど、周囲に評価され、モテるようになった。

「これが本当の自分なんだ、って錯覚してしまったんです」

その成功体験が、本音を押し殺す癖をつくった。
本当の自分を出さないほうが、うまくいく。

そう信じるようになった。

通じなくなった“武器”

大学生になり、それまで作り上げていた“偽りの自分”が、徐々に通用しなくなっていく。

留学を検討していたが、コロナの影響を受け中断。
恋愛もうまくいかない。
就職活動も思うように進まない。

「見た目が良ければ、学歴があれば、なんとかなると思ってました」

けれど、現実は違った。
積み上げてきたプライドが、少しずつ崩れていく。

「最初は、その現実と戦ってました」

それでも、逃げきれなくなったと感じた時に、ようやく自分自身と向き合い始めた。

何者でもなかった時間

まだやったことないことに挑戦しようと、友人に誘われていたこともあり起業をすることに。
ただ、起業後の生活は、決して華やかではなかった。

せどり、飛び込み営業、不動産関連の仕事、SNS運用。
泥臭く、報われない日々。

手元に残るお金は、お小遣い程度だった。

「正直、何の武器もなかったです」

それでも、必死に動いている時間だけは、自分を満たしていたという。
“頑張っている自分”でいることが、唯一の拠り所だった。

そんなとき、ある友人に言われた何気ない一言がこれまでの流れを変えるきっかけになる。

「そういえば、お前って香りにこだわりあるよな」

その言葉で、自分が唯一夢中になれていたものに気がついた。

香りが、記憶を連れてくる

友人の言葉をきっかけに、三村さんは本格的に香りと向き合い始めた。

最初は線香づくり。
素材を求めて訪れた線香屋で、作り方を教わりながら、一つひとつ試行錯誤した。

香りは、調香次第でまったく別物になる。
少しの違いで、線香の役割を果たさなくなる。

難しい過程であっても、なぜだか不思議と苦ではなかった。
むしろ、一生やっていられるという感覚があった。

ある日、亡くなった祖父の部屋に入ったとき、ふと感じたあの香り。

一瞬で、当時の情景が蘇った。

「香りって、人の心をいつの間にか記憶の一瞬に連れていくんだなって思いました」

そのとき、確信した。

世の中の人にも、同じ気持ちを感じてほしい、届けたい。
心を震わせる仕事がしたい。
香りなら、それができる。

香りを、表現にする

SPACE FRAGRANCEには、いくつもの意味が込められている。

人のパーソナルな空間を彩ること。
空間に香りを“乗せる”こと。
香りをベースに表現すること。
そして、宇宙への憧れ。

その背景には、学生時代から抱いてきた「アート」への思いがある。

音楽や絵、表現そのものが好きだった。
特に、当時夢中になっていたのが、ジャスティン・ビーバーだった。

曲を聴き、映画を観て、作品に触れるたび、人の心を動かせるアートの力に、何度も心を打たれた。

「その人にしかできない得意を武器にして、仕事として誰かの心を動かす。それって、すごくかっこいいなと思ったんです」

ただ一方で、自分が音楽や絵の世界で“表に立つアーティスト”になる姿は、どうしても想像がつかなかった。
そんな中で辿り着いたのが、昔からこだわりを持って寄り添ってきた「香り」だった。

香りなら、直接言葉を使わずとも誰かの感情や記憶に触れることができる。

ーー 香りで心を動かすことも、一つのアートなんじゃないか ーー

そう思えた瞬間、過去にジャスティンの作品から受け取ってきた感情と、今の自分の仕事が、一本の線でつながった。

SPACE FRAGRANCEは、香りを通して、誰かの心に残る“記憶”を生み出し、残すための場所でもある。

終わりに

香りを、「いい匂い」という表現だけで終わらせたくはない。
誰かの記憶に残り、その人の人生の節目にそっと寄り添う存在でありたい。

学生時代、ジャスティン・ビーバーの作品に触れ、人の心を動かすアートの力に憧れた。

そして今、自分にしかできない表現が「香り」だと確信している。

アニメ『ワンピース』の作中に、「人が死ぬ時は、人に忘れられた時だ」という言葉がある。

その言葉の通り、たとえその場にいなくても、香りでその人を思い出せるなら誰かの記憶の中では生き続けることができる。

三村さんが香りに込めているのは、そんな“存在を証明”するような価値だ。

これからは、五感である視覚や聴覚を使って楽しむ食事や映画館だけではなく、香りを主役にしたイベントを展開して普及させたいと考えている。
世界的な音楽フェスの空間演出、そして、いつかはジャスティン・ビーバーと同じ仕事をすること。

香りで、人の心を動かす。
SPACE FRAGRANCEは、その想いを世界へ広げていくための三村さんの挑戦である。

▼SNSリンク・活動情報

◼︎ SPACE FRAGRANCE(ブランド公式)
https://www.instagram.com/space_fragrance_

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◼︎ Instagram(個人アカウント)
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