前編では、長崎県で育った川林 誠弥(かわばやし せいや)さんの少年時代から、技能五輪への挑戦、関電工やJCBでの経験まで、その歩みを伺った。
様々な出会いを通じて人生の選択肢を広げてきた川林さん。しかし、その後訪れた大きな転機が、現在のBAR経営へとつながっていく。
後編では、BARを始めた理由や経営に込める想い、そして仲間とともに目指す未来について迫る。
すべてを失った先で見つけた、新しい人生
川林さんがBAR経営を始めたのは、人生の大きな転機が重なったタイミングだった。
父親との別れ。
仕事の契約終了による収入の減少。
そして、当時付き合っていた恋人との別れ。
多くの人なら立ち止まってしまうような出来事だったが、川林さんは意外にも前向きだった。
「逆についているな、と思ったんです。」
失ったものを嘆くよりも、「状況を変えなければ」という気持ちの方が強かったという。
そんな時に思い出したのが、以前から先輩に誘われていたBARで働く話だった。

もともと強くBARをやりたかったわけではない。
しかし、現状を変えるには新しい挑戦が必要だと感じていた。
「特にやりたいことがあったわけではないんです。でも、やらないよりやった方が面白そうだなと思いました。」
そうして2022年、BAR経営の世界へ飛び込むことになる。
振り返れば、これまでの人生で経験してきたことは、すべて今につながっていた。
サッカーで学んだチームワーク。
家庭環境の中で身についた人と向き合う力。
営業や接客で培ったコミュニケーション力。
そして何より、多くの人との出会い。
失ったものは確かにあった。
しかし、それ以上に新しい人生を始めるきっかけを手にしたのだ。
人が集まる理由は、お酒ではなく“人”だった
2022年にBARをスタートしてから、川林さんのお店には多くの人が集まるようになった。
現在のお店は、いわゆる「マッチングBAR」のようなスタイルだという。
もちろん大々的に打ち出しているわけではない。お客様同士のつながりや紹介を通じて、そのコンセプトが自然と広がっていった。

来店するのは、恋愛目的の方が中心。
男性は30代、女性は20代が多く、男女比はほぼ半々だという。
「知り合いの紹介で来る方が多いので、本当に良い人ばかりなんですよ。」
そんな環境だからこそ、お店全体の雰囲気も自然と良くなる。
では、数あるお店の中から、なぜ川林さんのお店が選ばれるのだろうか。
その理由を尋ねると、返ってきたのは意外にもシンプルな答えだった。
「スタッフの人柄だと思います。」
もちろん、お店のコンセプトや雰囲気もある。
しかし最終的には、「誰と過ごすか」が大切だと考えている。
川林さん自身も、お店では決まった役割を持たない。
盛り上げ役になることもあれば、聞き役になることもある。
時には人生相談や恋愛相談を受けることも少なくない。
「相談されることは多いですね。相手によって伝え方は変えています。」
幼い頃から周囲の話を聞く立場になることが多かった川林さん。
その経験が、今の接客にも自然と活かされているのだろう。

そして、川林さんが最も嬉しいと感じる瞬間は、お客様の笑顔ではなく、実はスタッフの成長だという。
「みんなが楽しそうに働いていたり、成長している姿を見るのが一番嬉しいですね。」
そのため、お店ではスタッフ一人ひとりの個性を尊重している。
接客スタイルを細かく縛ることはなく、それぞれの強みを活かして働ける環境づくりを意識しているという。
また、成果に応じて還元されるインセンティブ制度も整えている。
お客様のためだけではなく、一緒に働く仲間のためにも良い環境をつくりたい。
そんな想いが、お店づくりの根底にある。
だからこそ川林さんのBARは、単にお酒を飲む場所ではない。

人と人が出会い、悩みを話し、笑顔になれる場所。
そして何より、「また来たい」と思える人がいる場所なのである。
仲間のために、店舗を増やしていく
これから描く未来は、単に売上を伸ばしたり、有名店をつくったりすることではない。
その根底にあるのは、いつも「仲間」の存在だ。
現在の店舗に続き、次の出店先として考えているのが六本木。
そして、その先には西麻布への展開も視野に入れている。
もちろん、店舗数を増やすこと自体が目的ではない。
「仲間のためですね。」
そう川林さんは迷いなく答える。
店舗が増えれば、その分だけ活躍できる場所が増える。
責任あるポジションを任せることもできる。
仲間たちにとっての自信や信頼にもつながる。
自分一人のためではなく、一緒に働く仲間たちの未来をつくるために店舗展開を目指しているのだ。
将来的には、自らコンセプトやブランディングを設計しながら、各店舗の運営は信頼できる仲間たちに任せていきたいと考えている。
そのために大切にしているのが、「誰とやるか」だ。
これまでの人生を振り返っても、人との出会いが川林さんの人生を大きく動かしてきた。
一緒に働く仲間にも求めるものはシンプルだ。
「人のために動ける人ですね。」
能力や経験以上に大切なのは、人柄。
感謝ができること。
嘘をつかないこと。
周りを大切にできること。
そうした価値観を共有できる仲間と、これからも新しい挑戦を続けていきたいという。

店舗を増やしたい理由も、自分が成功したいからではない。
関わる人たちの可能性を広げたいから。
そして、一緒に笑いながら成長できる環境をつくりたいからだ。
川林さんの目指す未来は、単なる店舗展開ではない。
人と人とのつながりを大切にしながら、仲間たちが安心して挑戦できる場所を増やしていくこと。
その挑戦は、まだ始まったばかりである。
人生は一度きり。迷うなら進め
川林さんが大切にしている言葉がある。
それは、「感謝」だ。
これまでの人生を振り返っても、多くの人との出会いに支えられてきた。だからこそ、人との関わりの中で最も大切なのは感謝の気持ちだと考えている。
「感謝できる人とは長く付き合えるし、感謝できない人とは自然と離れていきますね。」
人を見るときも、肩書きや経歴ではなく、その人の言葉遣いや人への接し方を見ているという。
何気ない「ありがとう」が言える人。
相手を思いやれる人。
そんな人たちとの縁を、これからも大切にしていきたいと話す。
そして、今まさに人生に迷っている人へ伝えたいことがある。
「迷うなら、とりあえず行動した方がいいと思います。」

失敗することを恐れて立ち止まるより、一歩踏み出してみる。
うまくいかなければ、そこから学んで次に活かせばいい。
実際に川林さん自身も、これまで数々の失敗や挫折を経験してきた。
それでも、その経験があったからこそ今の自分があると感じている。
だからこそ、人生はどうにでもなると思っている。
最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いした。
少し考えた後、川林さんはこう答えてくれた。
「人生は一度きりなので、楽しく笑って過ごしてほしいですね。」

どんな時も笑顔を忘れずに生きること。
挑戦することを恐れないこと。
そして、自分の人生を自分らしく楽しむこと。
長崎の少年が、多くの人をつなぐBAR経営者になるまでの歩みは、そんなシンプルで力強いメッセージを私たちに届けてくれている。
▶︎ 前編はこちら
SNSリンク・活動情報
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◼︎Instagram|川林 誠弥
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